私の埼玉県立大学論 [随筆]
埼玉県立大学――。
越谷市はせんげん台駅から徒歩約25分程度という、歩くかバスに乗るか悩ましい微妙な距離に立地する。周囲をのどかな田園風景に囲まれそびえ立つ、その近未来的な建築物はどことなく浮いている感が否めない。
11年前、第1期生として入学した当時、生徒は1学年しかいなかったので、非常に閑散としたキャンパスは自分たちのものという感覚があった。少人数ゆえに、生徒や教員のほとんどが顔見知りというアットホームな雰囲気の中、学生生活を謳歌したものだ。
今では、ドラマや映画、CMでその近未来建築が撮影に使用され、メディアに頻繁に登場するようになった。あ、これはあの場所だな、なんて考えながら見入ることもある。
そんな、埼玉県立大学なのだが、実際は「住めば都」とも言えども、なかなかのツワモノだった。全面ガラス張りの校舎は、夏暑く冬寒いという優れた代物だった。授業で使った畑は、ガラスから反射した日光が吹きだまる場所で、作物の生育がすばらしく、二十日大根が一週間で育ってしまうほどだ。校舎と校舎の間を歩くと、反射した光が集まっているので暑く眩しい。もともとは田園地帯だったため、地盤がゆるかったらしく、ところどころ縁石が地盤沈下を起こしていたりもした。その地盤のせいで、校舎は縦に高くは建てられなかったらしく、3階建てでその分横に長ーく、端から端まで徒歩何分だ、という世界だ。
10年一昔となってしまった今はどうなのだろう。短大も併合されてしまい、故郷を失った喪失感も含めながら懐かしく思い出した。
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